人間が生身の身体と最小限のツールで自然のふところに分け入り、重力の恩寵だけで最もクリエイティブな生き物になれる遊び–。『ニセコパウダーヒストリー』制作のために数十人の方にお話をうかがった日々は、そんなスキーやボードの定義を、あらためて味わってみる日々でもありました。
イワオヌプリの硫黄鉱山やレルヒ中佐の来町にさかのぼるまちの歴史をひもときながら、僕はヒラフがスキーによって見いだされた特別な土地であることの意味に、考えを巡らせていました。
スキーというワンテーマによって、ヒラフの地域史は、額縁や資料庫に収められた過去のお宝ではなく、現在と未来に直結してイキイキと呼吸をする運動体でありつづけています。
僕にとって、この本に関わることができた経験は、いつまでも色あせることのない糧となるにちがいありません。
この機会をくださった刊行委員会の皆さまをはじめ、ご協力いただいたすべての方々に深く感謝申し上げます。
2011.12.17
ノンフィクション・ライター 谷口 雅春