NISEKO Mt RESORT Grand HIRAFU

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第30回 ホテル・ペンション開業物語-6
ひらふは、人を幸せにするところ。
ペンションあいらんど・石川美行さん 加鶴子さん※インタビューは加鶴子さん

 
 
 私たちはふたりとも上士幌町(北海道十勝管内)のJA(農協)職員だったんです。勤めて10年くらい経ったころ、とても楽しい職場ではありましたが、「自分たちの人生はこのままでいいのかな」と考えるようになりました。結婚して1年を過ぎ病気を発病した私は、子育てもできず、とりあえず買いたいものはある程度買えるかな、というくらいの生活の中で、「でもこのままでは大人として成長できないんじゃないかな」、と危機感を抱いていたんです。「もっと苦労をしなきゃ!」と思いました。そんな矢先私の父が他界し、人間(ひと)が大好きだった父の影響もあり、もっといろんな人間(ひと)と出会える仕事がしたいと思うようになりました。
 最初は小樽で喫茶店を開こうと考えていました。でもなかなか良い物件が見つからず(あっても手が届きませんでした)、まあいずれは家を建てるかも、とたまたま入ったモデルハウスで、運命的な出会いをしてしまったのです。
 その住宅メーカーの支店長さんが、いつもはいないはずなのにその日はたまたまモデルハウスにいて、私たちを見るなり「何か面白いお客さんだ!」と思ったのだそうです。そんなこんなで意気投合し、話の中から「何か」=「ペンション」。「ペンション」=「ニセコ」ということになったのでした。1990年5月のこと。
 わずかひと月で土地を手に入れました。12月に、間取りや外観はもちろん、カーテンの色までも決まって少々浮き足立って迎えた新年、突然、住宅メーカーからの呼び出しがありました。「この話はなかったことになるかもしれません」、と。
 担当の支店長さんが私たちには解らない事情で会社を辞めてしまい、夢の実現は振り出しに戻ってしまったんです。でもそんなことであきらめるわけにはいきません。いつもはおとなしい夫が「絶対やるゾ!」と宣言して、そんな姿にびっくりしたり。替わった支店長さんもがんばってくれて、結局91年12月に開業に漕ぎつけました。いま思えば、この事件(笑)は私たちの「本気」が試されたんだと思います。
 「あいらんど」という名前は、色んな愛がたくさん集まる場所になってほしいと願ったから。ふたりの仕事の分担は、主人は厨房で、開業前には先輩のペンションさんで宿泊しながら、料理の勉強をさせてもらいました。私の仕事は掃除とおもてなし! 特にお話です(笑) 。
 開業当初はエージェントに頼った営業で、ちょうどバブル景気がはじけたタイミングだったので、見る間に料金を買い叩かれるようになりました。このままでは無理かも! と追い詰められる中で、インターネットの予約に切り替える決断をしました。単なる安さじゃなくて、ちゃんとひらふの一員として、ここで生きる責任を感じながら、お客さまを心からおもてなししたいと思ったんです。
 本当に毎年厳しい現実と向き合う中で、私は頭をベリーショート(わかりやすく言えば「坊主頭!」です)にしました。裸の心でゼロからがんばろう、という気持ちです。95年の夏でした。ちょうどその年はオウム真理教があの恐ろしい事件を起こしていたので、美容師さんは、「坊主にしてもいいけど、せめて色を変えてね」と言いました。その結果、「猿キャラ」の私が誕生したわけなんです。
 スキーですか? 大好きと言うほどではなかったんですが、高1から始めたまま我流で滑っていました。でもここに来てお客さんと滑る機会が増えるうちに、「このままではお客さんのスキー人生を狂わせてしまう」と思って猛練習。がんばって1級を取りました。いまは主にスノーボードをやっていますが、49歳で念願のインストラクターになれました! 老体に鞭打って頑張ったなぁ(笑)。 今でも、お客さんと滑るときに少しでもいいサービスができるように、できる限りトレーニングをしてますよ。
 ニセコにはすばらしい山と川があって、日本海もすぐそこ。自然いっぱいのワンダーランドです。中でも、羊蹄山に向かって滑るこのロケーションは私の大好きな景色でもあります。
 あれから20年が過ぎ、オーストラリアをはじめとして外国からのお客さまがドッと増えたので、気がつけば、「あれ? ここは外国?」っていう毎日ですが、おかげで英語も話せるようになって、何ともエキサイティングな人生を楽しませてもらっています。一番の武器はボディランゲージですけどね。
 商売を離れてお客さんの立場に立ったり、違う環境を知るために、他のスキー場にも足を運びました。それぞれに魅力がありますが、でも私は、やっぱりここがいちばん好き。
 お客さまは、私たちふたりの人生に登場してくださる、最高の宝物! そう思っています。もちろんサービスの対価として料金はいただきますが、お客さんとは、家族のように、まずひとりの人間として出会いたい。おかげで私たちには、大家族ができちゃいました。
 ひらふは、人を幸せにする所だと思うんです。それは、地域全体の力の賜物。
 人間(ひと)が大好きな私たちにとって、ペンションという仕事というか生き方は、もうやめられません。出会ってくれた人間(ひと)やお客さまの笑顔が、私たちの最高の財産なんです!これからもずっとここで生きていきます。
DSC_3916.jpgのサムネール画像

ペンション・あいらんど・石川美行さん 加鶴子さん